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福岡高等裁判所 昭和59年(う)317号 判決 1984年11月29日

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

本件各控訴の趣意は、弁護人吉田卓提出の控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官吉川壽純提出の答弁書にそれぞれ記載のとおりであるから、これを引用し、これに対し次のとおり判断する。

所論は要するに、被告人らに対する原判決の量刑は犯情の評価を誤り不当に重いというにある。

そこで本件記録並びに証拠に現われた被告人らの本件犯行の態様、罪質、被告人原口の年齢、性格、経歴、本件犯行の動機、とりわけ本件脱税は原判決中(被告人原口に対する量刑の理由)欄に記載のとおり、被告人原口の指示により計画的に敢行されたものであつてその犯行手口も巧妙なものであり、その平均申告率も被告両法人のいずれも四十数パーセントにとどまり、そのほ脱額は総額一億一七三五万円余の多額に及ぶものであつて、脱税の動機も被告人原口の無理な経営姿勢に端を発した利己的なものとみられて格別斟酌すべきものでもなく、その結果は申告納税制度の運用を阻害し、税負担の公平を著しく損うものであつたこと、犯行後被告人らは三〇〇〇万円余りのほ脱分を納入したのみで残余の八千数百万円については納入される目途が立たないでいることなどを考慮するときは、所論指摘の、脱税分について全額納入出来なかつた理由や今後の納入見込み、また実質的には二重課税分が一部含まれていることなどの諸事情を被告人らに利益に参酌してみても原判決の量刑は相当であつてこれを決して重いということはできない。論旨は理由がない。

そこで刑訴法三九六条に則り本件各控訴を棄却し、主文のとおり判決する。

(井野三郎 坂井宰 松尾家臣)

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